み(仮)

the best is the enemy of the good

『10歳の保健体育』? 感想

 一迅社文庫から出ているが、発売当時はかなり騒がれた。同じ一迅社から出ている『30歳の保健体育』が性的描写のある、内容的には喜ばれるものだったので、『10歳の保健体育』のタイトルが発売前に興味を引いたのだろう。ただし、実際にはそれほど際立った内容ではない。当時は「非実在青少年」問題がインテリオタクの間で騒がれていたのもあって、たとえば和六里ハルの『ロリコンサーガ』(2010年、アクションコミックス)が市場に出ていた。そういう流れの元にあるので、根本的にはロリコンやペドフィリアの心情描写に切り込んだものではなく、表層的に扱ったものにすぎない。アマゾンのレビューにもあるように、10歳のはみるは脇役程度の扱いで、最後になって主人公の静姫に恋心に似た感情を抱くようになるが、本編を通してあまり重要な扱いではない。昨今のライトノヴェルに特有の文体主義を採っており、いたずらに言葉遊びと冗談が目立つ。

 


 だから僕はあまりこの作品を面白いとは思わないのだが、最後に静姫とはみるが互いの感情を心の内に仕舞っておこうとする。この箇所がロリコンの、少女への感情を警告している、と取れなくもない。作者はあとがきでこの作品を「ラブコメ」としているが、恋を題材にした作品で、相手の年齢が10歳のものは初めて読む。読んでいくと、ひょっとしたら異様な作品になるのかも知れない。すでに2巻は買っているが、今後を期待したい。