み(仮)

the best is the enemy of the good

ジブリ その他 雑感5

 完成度の高いのが「もののけ姫」であるが、やはり「美」と「醜」の問題に深くは踏み込まなかった。アシタカが「そなたは美しい」という場面と、サンがアシタカからもらったペンダントを見て「きれい」という場面の二つほどしかなく、やはり踏み込むようになるのはもっとさきなのだろう。とは言え、この問題の嚆矢となった作品ではあるまいか。

 

 この作品では人間を、どちらかというと悪く描いていて、少し不快である。ただ、森の者たちも悪く描かれてはいる。観終わった感想としては、どっちもどっちだと思ったが、これを観て人間の浅ましさなどという感想を抱いたなら、浅はかであろう。最後は人間を擁護しているとも取れる。仕方がなかったのだ、と。

 

 他に気になったと言えば、山の神として猪が出てきたことだが、何故か蛇が出てこない。吉野裕子はそのあたりのことを研究していたが、『山の神』(講談社学術文庫版による)によると、山の神には大きく二つのパターンがあり、猪と蛇であるという。「もののけ姫」には山犬、猪、猿、鹿などの生物が登場するが、主に出てくるのは前三つである。

 

 そこで「千と千尋の神隠し」を観てみたが、こちらは全くというほど感動しなかった。プロデューサーの鈴木敏夫や、僕の知人もこの作品を褒めていたのだが、面白さがよくわからない。映像を観る目がないということなのだろうか。豚に関心を持っているので注意して観たが、新しい描写も何もなかった。

 

 ただ、「ハウルの動く城」と同様、魔法使いが黒い鳥に変身する。どちらも魔法使いを比較的悪く描いているが、「神隠し」の場合は魔女であり、ハクが魔法使いになろうとする。これは一対一の関係であるのに対し、「ハウル」では学校という仲立ちがあり、教育というものがある。だから悪い魔法使いばかりでないのかもしれない。

 

 「となりのトトロ」も観たが、こちらはもう結構観ているので新しい発見はないかなと思っていたのだが、終盤では思わずもらい泣きしてしまった。が、草壁家はどう見ても中産階級なのに、人間性には傲慢さというものがなさ過ぎる。農家の人たちも反感を持っていないが、あれは嘘である。