み(仮)

the best is the enemy of the good

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(原題:"There Will Be Blood")

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
監督:P・T・アンダーソン / 脚本:同左 / 原作:アプトン・シンクレア, 『石油!』
出演:ダニエル・デイ・ルイス, ディロン・フレイジャー, ポール・ダノ, ケヴィン・J・オコナー, …
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ, モーション・ピクチャーズ・ジャパン / 2007年, アメリカ

19世紀末から20世紀前半のアメリカを舞台に, 石油採掘を仕事にする親子を描く. アメリカの石油産業を知るうえでも理解に役立つが, 面白いのは宗教や石油産業の発展といったものが描かれる中で, 実は家族の変化, キリスト教的な復讐を描いていることである. 作品の底に流れるのは, 経済発展が土地に根ざした農業, アメリカ的な風景を破壊したことへの批判的な視座であろうが, このことは上手く隠されている.

音楽や映像も申し分ないくらいに秀逸である. 特に全体を通して流れる, 暗い管弦楽の音楽は映画を引き締めるのに役立っているし, アングルやカットも音楽と共に, 観るものを不安にさせる. 映像も音楽も, それからシナリオも良いものだけに終盤の展開の早さと粗さが目に留まり, そこは残念であると思う.

家族よりもカネや仕事への忠誠を選んだ男が取る道は, 悲劇しかない.
(10/16)