み(仮)

the best is the enemy of the good

2013-05-12

5月1日からYCAMで始まっている, ニュー・ジャーマン・シネマ特集。某友人からファスビンダーヘルツォークがドイツ映画の中でもお勧めの監督であると教えられ, 観てみたかったので今回別の友人二人を誘って映画を観る。特集ではアルスランとファスビンダーの作品を取り上げているが, 今回はファスビンダーの「マルタ」と「ローラ」を鑑賞。「マルタ」は74年の作品で, 奔放に生きながらも実は家族に縛られていた女・マルタが, 結婚後, 夫のサディスティックな行いに身も心も壊れかける様が描かれる。マルタを演じる女優の迫真の演技も見ごたえ十分で, 初めから強烈なフックを頂戴した。次の「ローラ」は85年公開。土地開発をめぐる癒着と, 主人公と娼婦・ローラの関係を軸にして, 後半は急展開を見せる。複雑な男女の人間関係を催しながら社会の陰影にも切り込みを入れていて, わかりやすいとの友人の感想もあったが, 僕には「マルタ」よりも深みが感じられて好きだった。
 今回はこの手の非ハリウッド系と僕が呼ぶ映画を, あまり観ない友人たちと行ったので, 退屈でないか, 時間の無駄に思えるんじゃないかとの危惧があったが, これはこれであまりない体験として, それなりに楽しんでもらえたようで僕としても嬉しかった。今後はいつまで山口にお邪魔できるかわからないので, 山口の友人とも話しておきたかった。話も出来て, 連絡先も交換して, 十分満足だった。

前をフラフラする。以前, 友人から聞いた立ち飲み屋を探していたら, それらしき店を発見する。立ち飲み屋に沿わず, 洒脱な外観や内装で, 労働者が屯しているわけでもなく, 若者がわいわいしながら飲んでいたので驚いた。結局缶ビールをコンビニで買い求め, それからカラオケに行ったが歌えなかった。何かが吹っ切れないし, 大声で歌うことにいいかげん飽きてきたのかもしれない。せっかくフリータイムで頼んだのに一時間半で出てしまったので女性店員から「時間大丈夫ですか。何か不具合とかなかったですか」といらぬ心配までもらうことに。申し訳ない。今度来るときはは楽しいカラオケにしたい。

ころで, その友人とはおよそ4年ぶりぐらいに会ったのだが, たしか天神に遊びに行ったときのこと, 僕が宗教について熱心に話していたのが印象に残っているというようなことを言っていた。まったく覚えがない。その頃の僕は今よりも純粋なドイツ愛好者だったので, ドイツについて長々と喋った記憶はあるのだが, 宗教…うん? どういうことなのだろう, と呆気に取られた。

 二人の友人も数年前に比べると, 少し違っているように思う。一人はより無骨に自分をアプローチしていくようになったし(それは失礼というふうに感じないから, 彼の魅力なのだと思える), 対照的にもう一人のほうはどこかで「折り合い」をつけることに慣れてしまっているようにも感じられる。二人ともが他人との関係を大事にする人だから, 話していて面白いのだが, 自分自身がその違いに狼狽し, あるいは妄想気味になり, 会話を創造していく作業に参加できないでいる。
 僕がいま気になっているのは, それならこういう広い意味での交際関係が, 日本では日本人を通して作られていったものなのかということ。普通に会話することが年を重ねるごとに難しく感じてしまう僕にとって, 何かに解決策を見出そうと必死になっているのが自分でもわかる。いまはまだ, 滑稽だ。