み(仮)

the best is the enemy of the good

『華氏451度』

『華氏451度』を読んだ。本は図書館で借りた。トリュフォーが映画化したものを数年前に既に観ていたので退屈だったが, 二部以降はそれなりに面白く感じた。
要は反知主義なのだが, 実用性を強調した結果として「知識など無用」とするのではなくて. 幸福のために知識は無用だとする。

映画ではあまりそうは思わなかったが, 署長が良い。職業柄か本の知識を抑えていて, その上で主人公のガイを問い詰める。結局は彼は敵側に回るのだが(ガイは彼が自殺したがっていた, と思う), 読書体験の一つの弊害を象徴する。
あと映画との違いとしては, 終盤の描き方が違う。映画だとコミュニティの陰を描く手法で閉幕しているのに対し, 本作では戦争の記憶を糧にコミュニティの目的をよりきちんと書き表しているようである。もちろん, 映画でその辺りが描かれなかったわけではないが, より丁寧にフェニックスの例を用いて説明をしている。
映画では死んだ少女がコミュニティでは実は生きていて, 青春活劇のようだが, 本作ではおそらく死んでいることになっている。妻の最期は「家族」や「国家」の象徴のようになっていて, その辺りは同じような記憶がある。