み(仮)

the best is the enemy of the good

2014.11

2014年 11月の読書記録まとめ (読み終わった本)

「図解雑学 統計解析 (図解雑学シリーズ)」

丹慶 勝市/ ナツメ社/ 1404円/ (2003/03/26) ■ 読了(2014/11/30) / 評価:2.5 / 前半は統計学の基礎となる分散や平均の説明を, 後半はそれを元に数学的な解説を多く行っている。難しく, 読了しても仕組みを理解する助けにしかならないが, 大まかなイメージを掴むのには適している。本気で解説として読むにはふさわしくなく, 仕組みと理由とを紐付けたものでしかないので, 実際に頭で理解するには統計データを見て問題を解くかのように本物の数式にあたってみるのが良いのかもしれない。幸いにも, 私が通う図書館には統計学関係の蔵書が比較的に優れているようなので, 今度何冊かあたってみようとも思う。また, 統計は現在では電子計算機上で扱うものである。仕組みを理解すれば, 今度はR言語という統計で使用する言語を触ってみることで, より実際的な感覚を身につけることができるかもしれない, などと思う。 http://www.readingplus.jp/entry/4816334726/42464001

「ミミズ図鑑」

石塚 小太郎,皆越 ようせい/ 全国農村教育協会/ 5184円/ (2014/04/11) ■ 読了(2014/11/30) / 評価:3.0 / フトミミズについて書かれた本。ミミズの実に95%ほどがフトミミズであり, その種の多さは特筆すべき点であるが, 驚くべきことに2割程度しか名称の決まった種は存在しないという。それもそのはずで, 本書を一目すれば分かる通り, フトミミズの種類を素人が判別するなど困難であると分かる。どれも普通のミミズが少し変わったかどうかというぐらいで, みな一様に「ミミズ」なのだ。気持ち悪くすらなってくる。

判別方法は色々あるが, 外見的な決め手となるのは以下の5つである。 1. 体の断面の形 → 円筒, 偏平 2. 環帯の形と位置 3. 剛毛の配置 4. 外部生殖器の位置 5. 背孔の有無

環帯とは成体の特徴であり, ふつう白く太くなっている箇所である。ミミズは雌雄同体であるため, 雌・雄性孔をもつことになるが, これらは性の外見的特徴であり, これをつかってミミズは交尾を行う。 環境的な違いでは土壌の深さによって生息するミミズの種類と特徴が異なっており, 表層種, 浅層種(30-100cm), 深層種(100cm-)と分かれる。また, ミミズの種類によって内蔵器官, 特に腸盲嚢などの形が異なるため, 通常ミミズの種類はこれらの因子を比較検討しながら決めることになるようである。

このように複雑であるため, 名称も適当に付けられただろうという種類もあり, ノラクラミミズやゴツイミミズなどの種類も存在する。クソミミズなどは名前がいかにもなアレだが, 通常はトグロを巻いたように丸まっているためこの名があてがわれたという。ユニークな事例である。フトミミズ屬の生物学的な記載はオランダの自然史博物館の学芸員であったHorst氏によって3種が記載されたことに端緒を欲している。その中に青黒い体色のシーボルトミミズがいる。

  • フトミミズの採取は地層によって異なる。表層や浅い層は比較的採取が容易であるが, 深層は降雨時また事後に出てきたミミズを採取するか, または巣孔に7%のマスタード水溶液を滴下することで採取できるのだという。

  • 採取後は夏場であればアイスボックスなどに入れて持ち帰る。

  • ホタルミミズやイソミミズは発光することで知られている。

http://www.readingplus.jp/entry/488137172X/42464001

「オオカミたちの隠された生活」

ジム&ジェイミー・ダッチャー/ エクスナレッジ/ 3024円/ (2014/05/02) ■ 読了(2014/11/29) / 評価:3.0 / ソートゥース群と呼ばれるオオカミの群れを近場から何年もかけて観察することで, オオカミたちの生き生きとした姿を写真にすることに成功している。図版が多く, 解説は少ない。アメリカの絶滅危惧種法によって1970年代にリスト入りしたオオカミだが, 2003年にはリストから外されることになり, 再度市民, 猟師, 牧畜業家たちの憎悪の対象となっていく様を写す。巻末では, これまでのオオカミを管理する方向からオオカミと人間を交えた関わりの方法を管理していくことを提案している。

オオカミの俗説についても異議を唱えており, 特にオオカミが残虐で, 人を襲い, 家畜をダメにする動物であることには積極的に議論を仕掛けている。が, オオカミが生態系を変えることに異論がないわけではない。むしろ, ワピチやコヨーテの行動圏を変えたことを明かしてもいる。

オオカミの生態系については詳しく記さないが, オオカミの社会的な行動についてはいくらか詳しく書かれており, 特にオメガと呼ばれる群れの最下位を占めるオオカミが, 群れの中で「遊び」を提案する地位を占めており, このことで群れのバランスが取られることは興味深い。 http://www.readingplus.jp/entry/4767817161/42464001

「最新 クラゲ図鑑: 110種のクラゲの不思議な生態」

三宅 裕志,Dhugal J. Lindsay/ 誠文堂新光社/ 2376円/ (2013/05/24) ■ 読了(2014/11/25) / 評価:3.5 / クラゲについて書かれた本。ページ数は127と薄いが, 全ページフルカラーで写真を豊富に用いている。 クラゲを門と綱に分類し, そのうえで大きさ, 見られる時期, 分布, 飼育難易度や適切な飼育温度のデータも載せている。一般人が飼育出来るようにこれらのデータを載せており, 巻末には採取と飼育方法の簡潔な解説まであり, 充実してはいるが手頃な概説書となっている。 クラゲに関するコラムも昭和天皇がクラゲ飼育に貢献したときの話や, クラゲ研究者に女性が多いなどのほくそ笑むような内容で, 味わい深い。飼育解説の部分はややお手軽感が否めないが, 今度機会があれば挑戦したい。 http://www.readingplus.jp/entry/4416613547/42464001

「図解雑学 文字コード (図解雑学シリーズ)」

加藤 弘一/ ナツメ社/ 1404円/ (2002/07/01) ■ 読了(2014/11/25) / 評価:3.5 / 初版が2002年と古く, 最近の情報は網羅していないのが残念であるが, 日本語の近現代史を文字からなぞった本として, 書いてあることは充実して濃い。本書は文字コードの雑学本として読まれるが, 国体として, そして諸言語を国際的に位置づける取り組みの, 歴史の足跡をたどる本としても読まれ得る。近年ではコンピュータの改良によって文字問題は解決したかに思えるが, 未だ解決していないこと, そして文字を扱うことに横たわる問題にも目を向けている本として, 密度の濃い内容となっている。インド, アラビア語の辺りは特に濃密である。 http://www.readingplus.jp/entry/481633243X/42464001

「軍需物資から見た戦国合戦 (新書y)」

盛本 昌広/ 洋泉社/ 842円/ (2008/05/01) ■ 読了(2014/11/15) / 評価:2.0 / 日本の戦国時代における軍資, 特に木材の調達について述べる。

本旨は, 冒頭の「戦国大名が資材の供給源を確保すると同時に、過度な森林の伐採を抑制する政策を取っていたことを述べる。その一方で、合戦の場で行われた森林伐採という自然環境の破壊に対して、人々がいかなる対応をして、森林を守ったかを具体的事例で紹介する。また、「はやし」や植林という行為で、森林の再生や保全が図られていたことを明らかにする」と書かれている通りである。

木材は竹について述べられているところが多く, 栗やほかの堅木の有用性についても述べられている。戦国大名の木材軍資調達の手段と, 所領の土地からどのように調達したか, また木材を確保するための掟などについても述べる。武将は織田信長, 豊臣秀吉, 武田氏, 北条氏など有名な武将が多い。

後半は炭焼きと鍛冶の関係, また山守, 植林の話などが中心となる。剥山の文献上の推移なども話にあるが, 全体としてもボリューム不足の感があり, 読み応えに欠けるのが残念だった。 http://www.readingplus.jp/entry/4862482724/42464001

生物兵器化学兵器―種類・威力・防御法 (中公新書)」

井上 尚英/ 中央公論新社/ 864円/ (2003/12/01) ■ 読了(2014/11/11) / 評価:2.5 / 近代戦争で使われている代表的な化学兵器生物兵器について概説した本。化学兵器生物兵器についてそれぞれ総論 - 各論と分けて, 各病の特徴, 症状例, 対処法について述べている。コラムに, 生物兵器が実際に人類に与えた例についてやや詳しく書いている。新書であるため内容は薄いが, 概説を知るにはよいか。

以前に大学の講義でテロリズムについて学んだことがあり, その方面での知識が読解の助けとなった。日本における劇場型テロ, 個人テロが世界に与えた影響については本末に述べられている。言わば, 日本におけるテロは宗教団体, 政治団体(特に日本においては左翼組織だが)が担っており, そのためにかれらが独自に入手製造した生物・化学兵器がテロとして用いられることが多い。アメリカの9.11事件に先立つ数年前には既に, 日本でオウム真理教団によるサリン散布事件が起きており, これを踏まえてアメリカで法整備への着手が進んだと言われる(本書内容)。

実際の例をみるとアメリカでも郵便物送付による炭疽菌テロが行われ, ソ連時代のロシヤで, 同じく工場から作業員のミスによって炭疽菌がばら撒かれるなどの被害にはあっているが, 実例としてはまだ少なく, 戦争による生物被害ほど大きい ものではない。 が, 今後日本で, 或いは各国各地で犯罪者集団によるテロ行為が起きないわけではない。日本ではサリン事件による影響で「化学兵器禁止法」や「サリン特別法」が法制化されたというが, 昨今の交通機関等における警備体制をみるに有事の不安は拭いされないと考えられる。

まだ一つ, 気になるところがある。ボツリヌス菌使用の兵器がイラン, イラク, シリア, 北朝鮮などで開発されていると書いているが, 現状ではどうなっているのか。連日, 北のニュースといえば核兵器への懸念と拉致被害者, または金正恩周辺の話題ばかりであるが, 生物兵器が日本で使用される可能性は現状ないわけではなかろう。デング熱ごときで騒いでいるこの国で, 大いに心配である。

オウム事件も去ることながら, 731部隊についても仄めかしている箇所がある。この部隊のことはよく知らないが, 気になるのでいずれ読んでみたい。
http://www.readingplus.jp/entry/4121017269/42464001

「自動改札のひみつ (交通ブックス)」

椎橋 章夫/ 交通研究協会/ 1620円/ (2005/03/01) ■ 読了(2014/11/05) / 評価:2.5 / 自動改札機について書かれているのだが, 券売機や切符についても書いている。専門的な内容を平易に, 一般の読者にもわかりやすく説明していて, 別に鉄道に詳しくない僕でも理解出来るものなので良い。ICカードについても説明している。

  • 自動改札機 関西の方が自動改札機の導入が早かった。NRZ-1方式とFM方式とがあり, 不正乗車問題を解決するなどの方面から, 各社が恣意的に運用していた方式を旧NRZ-1方式からFM方式に転換し, 一本化することが求められrた。不正乗車問題は鉄道イメージとも結びつくので, 近年でも問題視されているこことがらである。対策はいくつか考えられる。物理方面では, 自動改札機のドアをどうするかということがある。欧米では全面的に不正乗車を阻止するという考え方があって, ハードドア方式を使っているところがある。ただ, 電車内で乗務員が点検し, 余分に払わせる方法を取ることで不正乗車を予防することにもなっているようで, これは日本でも採用されている。日本の場合, 不正乗車は定額の三倍の料金を払わせることをJRの利用規程としていて, 自動改札機では改札通過などの時間を切符に記録することで不正乗車を阻止している。

  • サイバネ規格 近距離(100kmまでの)切符ではエドモンソン券で, 別に定期券サイズのものがあり, これをサイバネ規格という。2つの規格を共通で使っているのは, そうすることが全体的にコストダウンだからであるらしく, いまだに2つのサイズが併用して用いられている。この規格が出た当初は某国会議員から不満の声が出たなどというが, いまはあまり聞かれない。切符の裏が黒色のものが自動改札機で利用可能なものだが, これは黒色がもっとも磁気を保有するためで, 昔は茶色だったという。

SuicaなどのICカードが出始めた当初の本なので, いま問題となっているIC規格や交通電子マネーの共通化, 一本化についてはまったく触れていない。が, JR各社が採用してきた方式を統一のものとすることは, 協議に時間が掛かり過ぎること, IC専用の自動改札機に手を加えないといけないこと(費用が掛かり過ぎること), Suicaには専用のサーバがあるらしく, ICカードで用いるバックグラウンドの技術運用をどうするか, など問題が山積しているように感じる。 おもしろいのは, 香港では2000年にICチップを埋め込んだ腕時計型の端末が限定で出たということで, いまiWatchやサムソンほか各社が似たような腕時計型端末を出しているがどうなるのか。混雑することは目に見えているし, 改竄されやすくコストもリスクもかかる端末をJRがゆるすか, と思うのだけれど, ICカードが費用低減に貢献するのだとしたら, そもそもカード媒体で出す必要はないのだと思う。 http://www.readingplus.jp/entry/4425761324/42464001


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