み(仮)

the best is the enemy of the good

桃井望 「Swiming Girl」を観て

昨日、桃井望の「Swiming Girl」というアダルトヴィデオを観た。僕自身、あまりアダルトヴィデオは観ない(ただし、アニメは除く)のだが、先日、知人が「伝説のAV女優って知ってるか?」という話をしはじめた。何をもって伝説と言ったのか、忘れたが、どうやらその女優はむごい殺され方をしたらしい。その時は知人も名前を忘れていたらしく、気になって自分でも調べてみた。ネットで検索をしたら、殺されたAV女優は2人ほどいるそうだ(他にもいるのかもしれない)。一人は今回の桃井望で、もう一人は里中まりあという女優らしい。知人に確かめたところ、桃井の方は名前に見覚えがあるが、里中はピンとこない、という話だったので、桃井の方を地元のレンタルショップで探してみた。すると一本しかなく、パッケージを見ても良さそうな感じはしなかったのだが、とにかく借りることにした。「Swiming Girl」だ。

 

Wikipediaによると、桃井は所謂ロリータ系と呼ばれているそうで、借りる前は若干の期待をしていた。ただし、パッケージといい、実際観始めてからも、「こんな感じでロリータなのか?」と正直、混乱した。顔はいわゆる美人顔とは程遠く、目は横長で大きく、顔全体がぼったりとしている。体型も「ぽっちゃり」と言うより「ぼったり」していて、顔もそうだが、80年代・90年代の若い女性らしさを感じさせる様子である。まだこの頃は、AV女優も美人である必要がなかったのだろう。たぶん当時でも美人と呼ばれなかったに違いないが、桃井は作品中で「一年くらい」彼氏がいないと語っており、ということは一年前は彼氏がいたことになるが、それでも美人とは考えられない。加えて、彼女は上の歯全体が前に突出しており、いわゆる出っ歯である。

 

さて、作品は桃井がスクール水着を着て、ジュースをストローを使って飲むシーンから始まる。そのあと寝椅子に横になり、目を瞑るのだが、画面が変わって今度は芝生の上を転がるボールを追いかけるシーンが表示される。それを彼女は笑顔で投げ返すのだが、次に違う色のボール(バレーボールくらいの大きさだろうか)が投げ返され、それをまた取りに行くのだが、走って行って投げ返す。投げる以外にもアンダートスをしたり、オーバートスをしたりして、いろいろな方法で返す。その間、コマ撮りのように連続して画面が表示されることもある。そんな様子が暫く流れたあと、今度はまた寝椅子で寝ている様子が流れ、様々な角度、視点から映される。その後、水と戯れ、カメラマンの男性らしき人と桃井のやりとりが映される。男性の使う「浮き輪」という言葉と桃井の「浮き輪」のずれがギャップを生む。やりとりは、全体を通してアイドルのプロモーションヴィデオのようであり、彼女のぶりっ子な様子がまた、時代を反映しているような気がする。また、このやりとりは下ネタに終始するが、途中で乳首のポロリが映される。最後に彼女の「プールでお遊びします。行ってきます」ということばのあと、水泳シーンが流れる。

 

後半は急に男優が現われ、以後エッチな展開になる。僕は知人から、「(性交渉が)リアルな感じがして、良い」という話を聞いていたが、なるほどなと思うのは、彼女の喘ぎ声と表情である。喘ぎ声は作ったような印象を受けず、実際の性交渉で女性が用いそうな声質だ。同じ音を高く、短く断絶させながらも繰り返し発音するため、本当に感じているのでは? という感想を持たせる。それに輪をかけて声が大きいのも、興奮させる原料になる。表情は情事中は目を細めているので、白けた印象を持たない。これも感じている、という印象を持たせるが、喘ぐ間の表情は口を恥ずかしげもなく開けているので、なかなか迫力がある。ただ残念なのは最後半の後背位で、セミロングの髪が前へいくため、喘ぎながらも後ろへ分けているが、これは現実味はあるものの、演技らしさが浮く。それを観てから僕は妙に白けた感じになってしまったが、それさえ無ければ全体的に良かった。たしかに現在のハードポルノが優位なことから考えればプロモーションヴィデオ的なところがあるが、時代を考えればそれも仕方がない。

 

ところで僕が残念に思った最後の描写から、ふとリアルってなんだろうと考えてみた。

知人は彼女の演技を「リアルで」良いと語ったわけだが、リアルを「本物らしさ」と捉えると、彼女の演技は実に虚像めいて見える。

実際、性交渉で女性は男性ほど感じはしないと聞いているし、たとえ感じたとしても「声を出す」時点でそれは虚像ではないかと思える。そこで、リアルなアダルトヴィデオ、というものを想定してみると、声をあまり出さないわけだから、男が一方的に突いて女が苦痛に身を悶えるという、なかなか迫真に迫った演技だが、これはどうして抜けない作品になってしまう。リアリズムAVなんてものがないのは、男が白けてしまうからで、そういう意味ではすべてのAVはロマンAVかハードAVになのではないか。しかしこれはAVの中では見出せないけども、官能小説や一部のエロマンガでは見出せる。エロマンガもたしかにロマン的なものが多いけれども、僕の好きな町田ひらくや、あるいは山本直樹なんかがリアリズム・エロマンガというものを描いてるのかもしれない。

誰もそう呼ばないけれども。

 

たぶん、僕の推測では、AVにリアリスティックなものがないのはそれが18禁映画と呼ばれるものや、昨今の性的な描写を含む作品に受け継がれているからではないかと思う。「エロティック」な作品と呼ばれるものは大抵そうではないだろうか。最後に桃井の死について述べると、調べた結果、男性と燃えている車の中で発見されたという(wikipediaより)。心中説と他殺説があるそうで、他殺説支持者は靴が家に置いてあったこと、PCの電源が付けっぱなしであったことを根拠に挙げているが、実際のところは何も判っていないし、犯人がいるとしても捕まっていない。ただ、民事裁判では「他殺」と認定されたらしい。だがこの記事を見ると、桃井の遺族から訴訟が起きたわけではないのが不可解でもある。家族間で何かあったのだろうか。ともかく、彼女のような女優が世を去ったことを残念に思う。心より、冥福を祈ります。

 

(参考)

桃井望 Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A1%83%E4%BA%95%E6%9C%9B