み(仮)

the best is the enemy of the good

「処刑の島」

処刑の島
監督:篠田正浩, 脚本:石原慎太郎, 出演:新田昌, 三國連太郎, 佐藤慶, 小松方正, …
製作:日生プロ, 1966年, 日本.

原作が武田泰淳で, 脚本が石原慎太郎というので, あまり期待はしていなかったのだが, 思ったより楽しめた. 話としては, 島で不良少年とされた子供たちが, 別の小島と呼ばれるところに送られ, 大嶽という軍人上がりの変人に奴隷のようにこき使われていたのを, 主人公の三郎が逃げ出し, 復讐に来るという話で, 取り立てて面白いわけでもない. 登場人物も芝居がヘタなわけではないのだが, 妙に浮いていて, 大嶽の娘, 亜矢などはまさに変人と言った露骨ぶり. ただ, 人間描写は島に住んでいる人の性格を写し取っているようで, その辺りは観ていて退屈だなどと思うことはない.

この映画の見所は, やはり終盤のオチだろう. 普通なら大嶽を殺すはずの三郎が, 用意していたドスで大嶽に指詰めを求める. 大嶽は元軍人で, 実は三郎の父をアナーキストだと言うことで, ついでその場に居合わせた家族を殺していた. 三郎が大嶽を殺さなかったのは, 亜矢が三郎に「あんただってその頃もっと大きかったら, 兄さんと同じように殺されても殺されても父さんを守ったんでしょう」と言ったのがきっかけになったのだろうと考えられるが, 殺したところで解決出来ないものがあることを, 指詰めの場面は示しているように思う. 大嶽が軍人であることを考えると, 戦争責任と結びつける「読み」が出来て, 更に面白い解釈が生まれる.