み(仮)

the best is the enemy of the good

「地獄の黙示録(特別完全版)」

地獄の黙示録(特別完全版)
監督:フランシス・F・コッポラ / 脚本:同左, ジョン・ミリアス
出演:マーロン・ブランド, ロバート・デュヴァル, マーティン・シーン, フレデリック・フォレスト
製作:アメリカン・ゾエトロープ, 2001年(初演は1979年), アメリカ

ベトナム戦争に駆り出された主人公たちアメリカ軍兵士の狂気をよく描いている. しかし, そこに描かれているのは実像ではないだろう. 戦争の悲惨さや人類の本質を描くなら, ドキュメンタリーの甘く冷たい言葉に酔いしればそれで事足りる. だが, 実像の中にサーフィンを楽しむアメリカ軍の兵士は出てこないであろう. この世界は虚像なのだ.

戦争の解決方法も, この作品内ではついに提示されないまま終わる. 最後の, 武器を捨てる民衆のシーンは, 戦争が終わったことを意味せず, 支配者が変わったことを意味しているからだ. ゆえに「地獄」なのであり, 地獄はどこまでいっても地獄のままである. 思えば, 故郷がないと感じたその時から, 主人公の周りには信仰が止んでいたのかもしれない.

印象に残ったのは煙を用いた幻想的な風景と, マリファナや合成麻薬にイかれて銃を乱射する兵士たち. 彼らの目に天国が映っていたとは思えない.
(10/13-15)