み(仮)

the best is the enemy of the good

「ローラーとバイオリン」

ローラーとバイオリン
アンドレイ・タルコフスキー / 1960年 / ソ連 / 48分

# 階層, 音楽, 約束, 労働

友人が面白いと言っていたので観たが, 「少し出来の良い啓蒙映画を観た」といったところ。あまり面白くはなかった。

ソ連の上流階級の子供であるサーシャは, バイオリンを5歳の頃から習っている。そのため, 近所の子供からは「音楽家」と揶揄され, バイオリンを奪われ, 投げられるなどといったいじめを受けるのだが, ある日, 道路を舗装する仕事をしている労働者のセルゲイと知り合うことになり, 親交を深めていく。

労働者と上流階級という階層の違いから, 二人の交わした約束とそれぞれの知人との約束の対比などが悲劇的に描かれており, そこが物語的には面白い。しかし, タルコフスキーと言えば幻想的とも言える映像と観念的なメッセージ性が見所とも言えるので, 何というか拍子抜けした。本作でもそういうシーンがあることにはある。例を挙げれば, 鏡や風船, 鳩などの小道具を用いた映像や, 鳥瞰的にローラーと人物を映すシーンがそうだろう。

友人の一人は映画の中で鏡が良かったと言っていたが, 私には陳腐な手法に思える(映画史的にはどう見えるのか知らないが)。むしろ風船を使った数コマが, 映像の明るさ(白さ)と相成って, 幻想的に映る。allcinemaなどの映画情報サイトで「ファンタジー」と形容されているのは, こういうシーンがあるからだろう。

少年が道路に投げたパンを見て, 労働者が「バイオリンと同じだから拾え」と言うシーンがくさいと感じるのは私だけだろうか。
(12/15)