み(仮)

the best is the enemy of the good

実験工房

巡回展らしい。北九州市立美術館(分館)の方へ行ってきた。
50年代からあるため, 早すぎた芸術集団などと書かれていたが, たしかに少し早いような気がする。芸術の新派, ニューウェーブのごとき動きは時代毎にあるわけだが, 実験工房のやろうとしていたこと, やっていたことなどは新左翼を思わせるような, 若者が自らの存在価値を求めてもがく様でもある。その意味でも, 彼らは時代を先取りした集団だったのかもしれない, と思う。
 
展示は個人の作品, 工房としての動き, 工房に関係する団体の動きなど, 回顧展に沿うものだったが, やはりかつての<現代芸術>だけあって, ただ作品をケースに入れたり, 壁に掛けたりして展示するだけでなく, ホワイトキューブを利用したスクリーン全面を使っての映像, 音楽を奇妙な形のCDプレーヤー(しかしそれは円形であるはずなのに, ヒモで引っ張って電源を入れる仕様になっているのが吃驚である)など, 拘っているような, 少し変わった展示の仕方を体験をすることができる。
実験工房では音楽の部門と, 美術の部門に分かれ, 当初は各々が別々に活動をしていたという。しかし, 彼らが集まって総合芸術の動きを成したとき, たんなる日本アバンギャルドから離れた"実験工房"らしさが表れているような気がする。それは彼らの活動当時に影響を受けた海外の現代アートへの, 時には反発であったかもしれないと考えるのだが, 面白いことに彼らの作品には完成, 或いは成熟されないものがあらわれており, 時折, 外見上の日本らしさが顔を出すようである。だがその日本らしさは, 微妙なものとして表出し, 感覚的な明るさ, 楽しさといったものを持たない。彼らが自らの回りに何を求めたのかは知らないが, 何かを求めた結果が奇しくも現代の文化創造に結びつき, 一方で変様した能<NOH>のように奇っ怪でしかない空気感をもったものを創造し, 50年代という時代の中で半身を宙に吊るしたようになっているのは興味深いと感じた。

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追記:ラジオを聴いていたらあるDJがオオアリクイの毛に包まれた外見を70年代のデザインのようだ, と発言。一瞬虚をつかれ, どういうことかと考えるも, すぐに丸みを帯びた商業広告を想起する。
展示を見ていて感じたのはそれとは反対に, 角や輪郭をもったものが多いような気がしたのだった。同時に, 仕方がないこととは言え, あの時代の絵画イメージを想像するときには必ずデザインの中にゴミが表出する。このゴミが厄介なもので, ノスタルジーなのか未成熟の表れなのか, 自分には判断出来ない。自身の未熟を感じる瞬間である。
 

実験工房 - Wikipedia実験工房(じっけんこうぼう)は、詩人の瀧口修造の下にさまざまな分野の若手芸術家約14人が集まって結成された総合芸術グループ。命名は瀧口による [1]。活動期間は1951年から1957年まで[1]。ただし、正式な解散はしていない。第二次世界大戦後の前衛芸術運動にて先駆的な功績を残した [1]。

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*1: 実験工房 - Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/実験工房
現代への扉 実験工房展 戦後芸術を切り拓く http://jikkenkoboinkamakura2013.blogspot.jp/