み(仮)

the best is the enemy of the good

「ショーシャンクの空に」

ショーシャンクの空に

フランク・ダラボン / 1994年 / アメリカ / 143分

#刑務所, 終身刑, 罪, 聖書, 希望, 同性愛, 仕事, 学歴



刑務所の状態が, あれが実状なのかは疑わしいのだが, 虚構であるにせよ, 非常なリアリティを視聴者に伝えるのに成功している。全体的な筋はよくできたストーリーだと思いながら, 最後には感動してしまう。名画と呼ぶに相応しい映画である。



観ていて身につまされる部分も少なからずあるにもかかわらず, 最後まで見通せるのは, やはりストーリーの出来の良さと「希望」があってこそなのだと思った。たしかに主人公が脱獄出来るあたりとか, 刑務所側の人間を巻き込むあたりとかは"よくできた"体のものなのだが, 仮にも近代的でその時代にあっては完成していた裁判制度が, あのような誤審を見過ごし, 再審までも所長の傲慢で拒否出来るあたりも"よくできた"もので, その辺はじゅうぶん許容出来る。



逆に, ここまで巧妙に組まれていなければたんなるイデオロギー映画にしかなりえなかったとさえ思う。恐ろしい映画である。



聖書と罪の対比も面白い。聖書を愛読する者が, 結局は破滅の道へと進む。宗教が罪を償う装置ではないという一面が示されていて興味深い。また, 罪を償うことと更生とは結びつかないのだということは服役中の囚人が, 「更生? それは国が作った言葉だ」と言い, 「私には関係ない」として, 社会的に成功する余地のある者だけに当てはめているところから, 「なるほどな」と思った。



終身刑も人間性を破壊する悪魔のようなシステムであることを伝えている。死刑が冤罪の可能性を真っ向から否定するものであることは, よく死刑制度問題で死刑反対論者が主張しているのだが, 終身刑制度もまた, 再犯を繰り返す可能性を否定できない。この映画では, どちらかと言えば終身刑を容認する立場に立っていると思われるが, 現実はたしかに映画のようには美しくない。日本でも, 聞けば窃盗を行った者が出所し, その後もやることがないので繰り返し窃盗を行うことがあるらしい。さらに, 国が仕事を与えた場合でも, 行き場をなくして自殺する者がいるとすれば, 終身刑制度も考えなければならない問題である。



特に印象的だったのは所長の最後のシーン。捕まえられる警備員を見た後に銃で自殺するのだが, ヒットラーの最後のようだった。Facebookの見知らぬ他人が「いいね!」しているのを見て, 内心ではあまり期待していなかったのだが, いい意味で裏切ってくれた。疑ってすみませんでした。

(2/15)