『ロミオの災難』
ロミオの災難
来楽零, 電撃文庫, 2008年
評価:C
シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を題材に, 高校の演劇部の男女の恋愛を描いた作品。ラノベの発想としては面白いのだが, 高校生の恋愛にそこまで感情移入する年齢でもないし, やはりキャラクターの設定はラノベ特有の現実味の薄いものということで, 正直なところあまり楽しめなかった。
この作品にもう少しホラー要素とハラハラさせる展開があればよかったのではないかと思う。その後の展開がわかるのは中盤かはじめのほうだったと思うが, 恋の原因がわかってしまったあとでも"どうにもならない"恐怖と, 現実の恋と虚構の恋との間の混乱を描いて, より劇的にすることは出来たと思うのだが, どうも不足感が否めない。
しかし, 劇が亡霊との対峙により改変・脚色され, マッキューシオ役の少女が亡霊への怒りと恋について語るシーンは面白いと感じた。情熱的な恋だけが恋ではないとの見解に至るところも, 恋のリアルな一面を捉えていて良い。全体的な出来がよければ再読の価値はあるかもしれない。
(2/16)