み(仮)

the best is the enemy of the good

生物兵器化学兵器―種類・威力・防御法 (中公新書)」

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著者: 井上 尚英, (2003/12/01)

近代戦争で使われている代表的な化学兵器生物兵器について概説した本。化学兵器生物兵器についてそれぞれ総論 - 各論と分けて, 各病の特徴, 症状例, 対処法について述べている。コラムに, 生物兵器が実際に人類に与えた例についてやや詳しく書いている。新書であるため内容は薄いが, 概説を知るにはよいか。

以前に大学の講義でテロリズムについて学んだことがあり, その方面での知識が読解の助けとなった。日本における劇場型テロ, 個人テロが世界に与えた影響については本末に述べられている。言わば, 日本におけるテロは宗教団体, 政治団体(特に日本においては左翼組織だが)が担っており, そのためにかれらが独自に入手製造した生物・化学兵器がテロとして用いられることが多い。アメリカの9.11事件に先立つ数年前には既に, 日本でオウム真理教団によるサリン散布事件が起きており, これを踏まえてアメリカで法整備への着手が進んだと言われる(本書内容)。

実際の例をみるとアメリカでも郵便物送付による炭疽菌テロが行われ, ソ連時代のロシヤで, 同じく工場から作業員のミスによって炭疽菌がばら撒かれるなどの被害にはあっているが, 実例としてはまだ少なく, 戦争による生物被害ほど大きい

ものではない。 が, 今後日本で, 或いは各国各地で犯罪者集団によるテロ行為が起きないわけではない。日本ではサリン事件による影響で「化学兵器禁止法」や「サリン特別法」が法制化されたというが, 昨今の交通機関等における警備体制をみるに有事の不安は拭いされないと考えられる。

まだ一つ, 気になるところがある。ボツリヌス菌使用の兵器がイラン, イラク, シリア, 北朝鮮などで開発されていると書いているが, 現状ではどうなっているのか。連日, 北のニュースといえば核兵器への懸念と拉致被害者, または金正恩周辺の話題ばかりであるが, 生物兵器が日本で使用される可能性は現状ないわけではなかろう。デング熱ごときで騒いでいるこの国で, 大いに心配である。

オウム事件も去ることながら, 731部隊についても仄めかしている箇所がある。この部隊のことはよく知らないが, 気になるのでいずれ読んでみたい。

カテゴリ: 新書 / 戦争 ( )

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