み(仮)

the best is the enemy of the good

「サマリア」

サマリア
監督:キム・ギドク / 脚本:同左 / 出演:イ・オル, クァク・チミン, ハン・ヨルム, オ・ヨン, …
製作:キム・ギドク・フィルム, 2004年, 韓国

三部構成で, 一部はヨジンとチェヨンの二人が援交をしながらヨーロッパへ行くための資金を稼ぐ. 二人はソウルに住んでいると思われる女子高生である. 二部では, チェヨンが死んだことでヨジンが復讐のため, チェヨンの援交相手となる男たちに再度援交を申し込むという話で, ヨジンの父が娘の援交を偶然目撃したことにより, 男たちに援交を断るよう迫る. 三部は援交からヨジンら父子が旅行の途次に墓参りをする話に変わり, 父は自分の罪を償い, 娘を車に残す. 以上が大まかな映画の筋であるが, この映画は全くの駄作であると思っている. 時々のシーンが全体として生かされず, 無駄に1シーンが長いうえに話の展開が凡庸で, 映像的に優れているわけでもない. 非常に退屈な映画である.

まず援交が型通りに描かれている. 援交によって紡がれる愛があると信じているチェヨンと援交そのものを憎むヨジン. 二人の援交の動機もヨーロッパ旅行の資金とよく聞くような話で, 貧乏であるから身体を売って生活のための資金を稼ぐという話と話型の凡庸さの点ではあまり大差ない. しかもドキュメンタリーのような作りにもなっておらず, 女優二人が非常に美形であるので, こちらとしても同情し難い. もっと稼ぐ方法はあったろうに…などと思うのである.

警官に追い詰められて自殺するチェヨンの敵打ち宜しく, ヨジンはチェヨンの援交相手と再度交際をし, 逆に男にカネを返すことで復讐しようと目論む. このあたりは連城三紀彦の「少女」を思わせるが, 援交相手の死を見たあとで手帳を捨て, 復讐を諦める. 二部からは父親が主人公になり, 男達に復讐する. おそらく父と子で掛けているのだろうが, 三部からは援交そのものが話の中に入ってこないので, あまり魅了されない.

三部は親子愛のテーマなのだろう. 援交の陰はなりを潜める. 映画の冒頭からキリスト教や仏教など, 宗教的な言葉が散りばめられているが, 特に第三部では父の言葉を介してマザーテレサやマリア, 奇跡などといったキリスト教的な言葉が見られる. しかし, これも特に深められることもなく, 父は自首し, 娘だけが取り残される. allcinemaで映画評を読んでいたら, こういった取り残されるような感覚を気に入っているファンが多いようなのだが, それならそれで, 他に作り様はあっただろうにと思う. どうやら, 当時の韓流ブームからは一線外したものとして歓迎しているようで, オリエンタリズムの臭いがぷんぷんとしてくる.
(10/15-16)