み(仮)

the best is the enemy of the good

『魔法少女☆仮免許』

  昨今のライトノヴェルに特有の笑いと言葉遊びを取り入れた文体であったため、前半は読むのに疲れたが、直に慣れた。魔法使いが魔王に委託された存在だとか、国家公務員であるとか、人間を使い魔に出来るといった設定は僕には斬新だと映った。主人公の和貴と二人のメインヒロインの関係はいわゆるラヴコメではないが、ヒロインに振り回される主人公に次第心を寄せていく経過が月並みである。だが心理描写を理屈で説明する点は鮮やかだし、文章も簡潔であることから、差してマイナス評価とはならない。魔法少女モノの典型となる悪と正義の戦いという二項図式ではなく、ヒロインたちが魔法使いというステータスを通じて自身の欲望や復讐や互いの関係を構築していくというストーリーなので、あまり魔法少女モノっぽくはない。あくまで世界観と捉えたほうがよいのかもしれない。

 

 まあ、世界観と言っても、魔法使いそのものが秘匿されているので、登場人物を中心とした世界観である。魔法理論などが出てくるが、重要な箇所は除き、あまり詳細に穿った説明はされていない。作者がそういったものにあまり得意ではないのかもしれないが、三人魔法使いが登場し、一人はかなりのめんどくさがりで、メインヒロインの二人はお互い敵対しているので、魔法理論を議論する場などもあまりない。主人公は魔法については無知に等しいし、ヒロインから主人公にそういった説明がなされることもない。

 

 心理描写も現実的に考えて、一介の高校生がそこまですらすらと説明するのはおかしいのだが、理論立てて説明するのでそれはそれで美しい。だがどう見ても、水萌の性格は異常である。影を背負っているから当然といえばそうなのだが、その影も由緒ある魔法使いの家柄に生まれながら魔力に乏しい故に差別を受けてきたことから生じたのだとしても、あそこまで歪曲するのは珍しい。かなり頑固というか人を見下して話を聞かないのだが、和貴の批判に対して理論立てて反論するので余慶に性が悪い。

 

 そして登場人物の性別だが、全員が女性か、女性っぽい性格なのが気になった。今後、新キャラが出るのかもしれないが、作者は女性に何かコンプレックスでも抱いているのだろうか。